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薬剤師は景気の好不調の波を受けにくい人気の業種です。しかし、人生の多くの時間を費やすわけですから、やはり、よりよい処遇・よりよい人間関係・よりよい職場環境を求めたいものです。一度しかない人生です。ユーザーのみなさまが、ぜひ素敵な仕事・職場にめぐり合えることを祈っております。

コラム:薬剤師を取り巻く環境「門前薬局の終焉の始まり」

薬局を取り巻く環境は激変しています。大部分の薬局が保険調剤に依存している以上、医療制度改変の影響を受けざるを得ません。

さらに調剤薬局チェーン間のシェア争い、ドラッグストアなど他業態からの浸食も目立ってきました。

それでは、薬局はこうした環境変化にどう対応すべきなのでしょうか。

前回のこちらのコラムでは、調剤偏重からの脱却が必要と指摘しました。

>>>調剤偏重からの脱却が必要

続く第二のポイントは、立地条件の変化への対応です。

門前主体の薬局立地は「病院の外来規制」「マ イナンバー制導入(社会保障カード)」「リフィル処方せん導入」の3つの要因によって、確実に変化します。

まずは「病院の外来規制」。1996年から200床以上の病院を受診した場合は初診料に加えて各医療機関が定めた特別料金を徴収できる特定療養費制度が導入されていますが、2012年診療報酬改定では、特定機能病院や地域医療支援病院に患者が紹介状を持たずに受診した場合に、病院が受け取る初診料を引き下げ、その分を患者から徴収する仕組みが導入されました。

病院機能を急性期の入院に特化させ、長期入院患者は在宅などに移行させる一方、外来については診療所機能を活用する政策です。このことは処方せんの受け皿業態として存在していた門前薬局の優位性が低下することを意味します。

「マイナンバー制」も薬局の在り方に大きく関わります。年金、医療、福祉、介護、労働保険等の社会保障分野、国税および地方税の税務分野等を一元管理するマイナンバー制が2015年から開始されます。

当初は税務分野等のうち可能な範囲で利用が開始され、その後、段階的に利用範囲を拡大することになっています。

医療では薬歴はもちろん、カルテや検査値なども1枚のカードで引き出せることになるため、患者は門前薬局に行く必要がなくなります。薬局の薬剤師は医師のカルテや検査値を読み取る能力が必要になりますが、同時に薬歴は他の医療職種も閲覧できるようになるため、記載内容もより充実が求められます。

これにより、 薬歴管理を中心とした現在の医薬分業の概念が変わると同時に、門前薬局を中心とした点分業から地域面分業への移行を加速させると思われます。

また、厚労省の「チーム医療の推進に関する検討会報告」(2010年3月)に盛り込まれた「リフィル処方せんの導入」も課題です。

日本では「反復調剤」とも呼ばれるリフィルのメリットとしては、病院に行く手間・時間の節約、医療費節減などがあります。

1回の受取りを決めておき、飲み終わったら薬局から再度投薬してもらう。この間に問題が生じた場合は医師の診断を仰ぐ、という仕組みです。門前薬局に行くことなく、職場や住まいの近くに「かかりつけ薬局」を設けて定期的に処方薬を受け収ることになる、この制度では、医師は症状の落ち着いた患者は薬剤師に任せ、新規や本当にじっくり診なければならない患者に時間を割くことができます。

従って、定期的に薬局を訪れる患者の観察、コンプライアンスの確認などの局面で薬剤師の役割が重要になります。

すなわち、薬剤師に対する、そこまでの信頼感が醸成できるかということになります。

昨今のチーム医療の流れから見て、医師の負担軽減、患行のQOL(クオリティーオブライフ)向上に資する取り組みであれば大いに推進される可能性はあります。

繰り返しになりますが、薬局薬剤師に対する信頼いかんに懸かっていることは間違いありません。

これらの他にも、地域包括ケアシステム、ドラッグストアの調剤参入などがあり、これらの動向も点から面への転換を促すはずです。

門前薬局は薬局側にとっては、処方元である医療機関の処方傾向が分かり、備蓄も容易であるなど効率的ではあります。しかし、薬歴管理、お薬手帳などの一元管理には不都合な点が多いことが指摘されています。

薬局が患者ではなく、医療機関を向いて経営されてきたと批判されてもやむを得ません。薬局経営者の意識とは無関係に、着実に門前薬局の終焉が近づいています。従来のビジネスモデルは通用しない時代に突入したことを肝に銘ずるべきかもしれません。

参考になさってください。

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